おもちゃ絵とは

おもちゃ絵は、絵双六やカルタと共に、近世後期から近代にかけて製作・出版された千代紙風の図鑑的な知育玩具です。

 

同じ教育資料といっても教科書的な往来物と異なって、おもちゃ絵は、遊戯用の玩具そのものとして楽しんだり、遊びながら日常生活に必要な知識を習得したりするものでした。

 

おもちゃ絵は、昔話や物語を絵本風にしたもの、日常生活に身近な事物を集成した物尽くし、着せ替え、前後の形を貼って作る両面合わせ、折ると画面が変化する折替わり、日常品の切り抜き遊び、影絵、あやつり人形、判【はん】じ絵、なぞなぞ、猫や鼠の擬人画、歌や語り物、辻占【つじうら】、絵馬、単語、凧絵【たこえ】、お面、羽子板、双六、カルタ、新聞記事などがありました。それらの題材となったのが、子供の遊び、玩具、姉様、武者、動植物、植木、縁日、祭や節句、曲芸、里神楽、天神様、福神、能、歌舞伎役者、忠臣蔵、戦争、勲章、行列、東京名所、開化風俗、貨幣、乗物、家財道具などです。

 

これらとは別に、紙細工で立体的な模型を製作する組上【くみあ】げ燈籠、立版古【たてばんこ】などがあって、一枚だけの簡単なものから数枚続きの大がかりなものまで及びます。組上げ燈籠は肥後の山鹿燈籠【やまがどうろう】を源泉とするのでこのように呼ばれますが、単に組上げ絵とも言い、餝立【かざりた】てなどもこの類でしょう。寛政期(1789-1801)頃から京や大阪の土産物として発売された、組立て用のおもちゃ絵で、内容も歌舞伎に限らず、九枚続きの偐紫田舎源氏【にせむらさきいなかげんじ】の挿絵などがありました。立版古は、文化期(1804~1818)初年に江戸で生まれた、歌舞伎の舞台を大がかりに作るもので、完成した際の間口や奥行の寸法が記され、額縁様の枠も付き、歌舞伎役者の宣伝用に作られたとも言います。

 


《参考文献》

 

(小町谷 照彦【こまちや てるひこ】 | 本学名誉教授)