絵双六とは

東京学芸大学附属図書館(以下「当館」)は194点(2021年12月現在)の絵双六を所蔵しています。

 

絵双六とは江戸時代に始まり明治、大正、昭和にかけて印刷物として大衆に広く流布した遊具の一つです。お正月の遊びとして、第二次世界大戦以前は多くの家庭で行われていましたが、戦後次第にその姿を消していきました。ただし現在もコンピューターゲームの中に絵双六と同じようなものがあるそうですし、人生ゲームは絵双六と大変よく似たゲームです。その意味では絵双六の文化は現代にも継承されているといえるでしょう。

 

絵双六の作られ方には廻り双六と飛び双六の二種類があります。廻り双六は江戸時代の道中双六が基本の形です。ふり出しは江戸の日本橋、さいころの目にしたがって東海道五十三次の宿場を進み、京都が上がりとなります。飛び双六は、ふりだしのところにさいころの目の数が三つ程度、それぞれに飛ぶ場所が指定してあります。出たさいころの目にしたがって指定された場所に飛びます。これを繰り返して、上がりを目指します。

 

この二種類の方法を活用して、多様な題材で絵双六が作られました。道中双六は江戸時代の旅の様子を示していますし、出世双六という人生ゲームのようなものもありました。当時の歌舞伎を題材にしたものもあります。明治になり、文明開化の時代を迎えると新しい文物や子供の学習内容も盛んにとりあげられました。商店の広告として絵双六が作られてもいます。昭和になると漫画のキャラクターも登場するようになりました。

 

当館収蔵の絵双六からは、江戸時代後期から昭和初期までの生活や文化、子どもたちが遊びの中から何を学んでいたかを具体的に知ることができるでしょう。

 

(黒石 陽子【くろいし ようこ】 | 人文社会科学系 日本語・日本文学研究講座教授)